今日は、警察署で新規の古物商許可申請を実施してきました。
慣れ親しんだ業務ではありますが、毎回申請が完了するまでは気が抜けません。
行政機関への許可申請の特徴の1つは、ローカルルールが存在することです。
同じ許可申請であっても細部の提出書類が局単位、県単位、署単位、市区町村
単位で異なることも多々あります。
これは正直驚くべきことですが、場合によっては担当者よってさえも異なることも
あります。
本来、各法令で許可申請の取り扱いが定められているはずですが、現場担当者
の判断などにより、追加・変更されているのでしょう。
ですから許可申請を実施するにあたっては必ず申請先に確認するようにしています。
今回も事前に確認しましたが、驚くべき回答が。
今回のお客様は、美術品の古物をメインで取り扱う予定ですので、当然申請書でも
主要取扱品目は、美術品と記載しますが、警視庁は認めないと。
美術品を主要取扱品目とするには、役員や管理責任者の経歴の中に美術商、
あるいは学歴に美大卒がなければ不可とのこと。
理由は、贋作や盗品をつかまされてしまい適正取り引きに支障を来す、というもの
でした。
さっぱり意味が分かりません。
そもそも古物商許可自体が盗品が中古市場に流れる可能性があるため、身元が
しっかりし、犯罪歴がなく、判断能力が備わっていなければ許可を受けることが
できないことになっています。
憲法では、職業選択の自由(営業の自由)を認めていますので、本来は営業をする
ために一定の制約を課すことはできないと考えるべきです。
しかし、何の制約もなかった場合、公共の福祉を実現できないことも考えれます。
その一例が盗品が中古市場に流れ、何も知らない一般消費者が購入してしまうことが
起きないようにするための最小限の制約は許されるべきと言えます。
では今回の警視庁の取り扱いはどうかと考えると、個人的には職業選択の自由
(営業の自由)を侵害するのではないかと思います。
この点を担当者に見解を聞いたところさらに驚くような回答がありました。
申請書には、主要取扱品目と取扱品目を記入しますが、主要取扱品目には、
美術品以外を記載していただき、取扱品目として美術品を記載すれば、問題ない
とのこと。
驚きです。
つまり申請書上だけのことで、結局は美術品を扱えるということです。
こうなると、もはや警視庁が言う美術品の盗品や贋作が流通することを防止する
という目的は全くのお題目であることが判明しました。
この点について問いただすと、主要取扱品目を美術品にしても申請を受け付けると
言い出す始末です。
一体何なんでしょうか?
結局のところ盗品である美術品が流通して問題になり、警察の責任を追及された
際の逃げ口上のためでしょうか?
私のように1つ1つ説明を求め、対応しなければ美術商になれないということです。
もしかすると何も主張しなかった人は、道具商か何かされていると思います。
いくら警察といえども法令によらずしてこのような制約的な取り扱いができるとは
思えません。
この事例が示すように、時として行政機関は、国民に対して法令に基づかない不要な、
あるいは過度の要求や規制を課してくることもあります。
今回の一件で、私たち行政書士は、各行政関連法令の専門家として、国民と行政機関
の橋渡しをしなければならないと痛感しました。
もちろん国民の側にだけ立つのではなく、時には行政機関が求めるレベルに国民が
あるよう国民に対しても援助や時には指導をしなければならないと思いました。
そのためには日々研鑽していかなくてはなりません。
日々精進、日々努力です。