FC加盟契約を締結する時点では、FC本部からさまざまな意思
決定を促す資料が提示されていると思います。
例えば、収支予測や予想来店顧客数などが提示されるでしょう。
こういった資料を確認し、加盟希望者はFC本部へ加盟することに
なります。
しかし、こういった資料が後々トラブルを引き起こすこともあります。
FC本部の収支予測に反して、一向に黒字化する見通しが立たないと
加盟店は、本部に対して「話が違う」となります。しかし、加盟店は
独立の事業者なので、収支予測に反して赤字が出たからといって、
すぐにFC本部へ責任を問うことはできません。
FC本部に責任を問うことができるのは、加盟契約締結段階において
法令に違反するような説明があった場合のみです。
☆ 法令違反の説明
・ 中小小売商業振興法に定める事項について説明しなかった場合
・ 契約の根幹をなす重要な事項について説明しなかった場合
(独占禁止法)
・ 虚偽もしくは誇大な説明をした場合(独占禁止法)
・ 民法で定める詐欺行為、不法行為等に該当する場合
以上のように法令で明らかに定めがある場合しか、FC本部の責任を
問うことはできません。
情報提供義務違反に関する裁判例
・ 詐欺又は詐欺的行為としてFC本部が違法とされた事例
契約締結の意思決定に重要な影響を及ぼす事実につき故意に
これを隠蔽して開示告知せず、却って虚偽の事実を真実であるかの
ように誇張して告知した。
(大阪地判昭和53.2.23)
FC本部が、客観的にみて多数の加盟店を事前の説明どおりに
運営していくだけの意思も能力もないのに、その意思があるかの
ように偽って説明を行なった。
(水戸地判平成7.2.21)
・ 不法行為としてFC本部が違法とされた事例
FC本部は、フランチャイズシステムが行政法規に違反する可能性が
ある場合、当該事業の法適合性に関する問題点について十分
説明する必要があり、これについて何らの説明を行なうことなく、
かえって法令違反はない旨、強調して勧誘した場合に不法行為が
成立する。(東京地判平成11.10.27)
・ 信義則上のFC本部の情報提供義務
FC加盟契約を締結するにあたり、FC本部は加盟店になろうと
する者に対して、FC加盟契約に関する意思決定のための判断
材料になる客観的かつ的確な情報を提供すべき義務を負っている。
FC本部と加盟店に経営能力や情報収集分析能力に格差があり、
専門知識を有するFC本部が加盟店を指導援助することが
予定されていることを理由として、FC加盟契約に関する意思決定に
際して客観的な判断材料になる情報提供義務がある。
(東京高判平成11.10.28)
☆ まとめ
上記では、FC本部にFC加盟契約を締結する段階で義務が
あることに触れました。
一方で加盟希望者になんらの義務がないか、というとそうでは
ありません。フランチャイズシステムは、FC本部と加盟店は
それぞれ独立の事業体です。
加盟店も事業者ですから常に事業リスクは内在しています。
FC本部から一定水準以上の情報開示を受けた上で、意思決定を
した場合には、赤字は加盟店が負うべきだという判断になるという
ことを忘れてはならないと思います。
FC本部と加盟後も良好な関係を築くためにも、両者が必要な情報を
開示した上で、FC加盟契約を締結するのが望ましいでしょう。